今回は、仏教説話の中でもっとも有名で、もっとも切ない物語です。
主人公はキサーゴータミーという若い母親。
この話は『ダンマパダ』の詩に付された注釈書が伝えるエピソードで、2500年間、数えきれない人の悲しみに寄り添ってきました。
先に言っておくと、今回は少し重いです。
でも、最後まで読んでもらえたら、この物語がなぜ「優しさの極み」と呼ばれるのか、わかってもらえるはずです。
キサーゴータミーは貧しい家に生まれ、嫁ぎ先では肩身の狭い思いをしていました。
男の子を産んで、ようやく大切にされるようになった。
その息子が、歩き始めたばかりの歳で、突然死んでしまいます。
彼女は、現実を受け入れられませんでした。