「私、生まれも育ちも葛飾柴又です」
この口上で始まる映画が、1969年から半世紀にわたって50作。
『男はつらいよ』は、同一俳優が同一主人公を演じた映画シリーズとして、ギネス世界記録に認定されています。
世界一は、ジェームズ・ボンドでもインディ・ジョーンズでもなく、葛飾柴又のテキ屋のおじさんなんです。
前回が「型を壊す」前衛の話だったので、今回はその正反対。
同じ型を、同じ役者で、同じ町で、50回磨き続けた映画の話です。
そしてぼくは、これも前衛と同じくらい偉大だと思っています。
主人公は車寅次郎、通称・寅さん。
テキ屋稼業で日本中を旅する、フーテンの独り者です。
ふらりと故郷の柴又に帰ってきては、団子屋を営む叔父夫婦と妹さくらの平穏をかき乱し、騒動を起こし、旅先で出会った美女(マドンナ)に惚れ、失恋し、また旅に出る。