世界史には、鳥肌が立つような偶然があります。
紀元前6世紀から前5世紀。
インドではブッダが悟りを開き、中国では孔子が弟子に語り、ギリシャではソクラテスの先輩たちが哲学を始めていました。
ユダヤの預言者たちの活動もこの前後です。
人類の主要な思想と宗教の原型が、互いに没交渉のまま、数百年の幅にぎゅっと詰まって生まれている。
哲学者ヤスパースは、紀元前800年から前200年ごろのこの数百年を「枢軸時代」と名づけました。
人類の精神の、回転軸になった時代という意味です。
そしてブッダと孔子とギリシャ哲学が重なる前6〜前5世紀は、その枢軸時代の中でも、とりわけ密度の濃い心臓部にあたります。
なぜこんな同時多発が起きたのか。
諸説あるなかで、グレーバーは挑発的な補助線を引きます。
枢軸時代の思想の爆発地帯は、硬貨の発明地帯と、ぴったり重なっている、と。
前々回の話を思い出してください。
硬貨は前7〜前5世紀ごろ、リディア(ギリシャ文化圏の隣)、中国、ガンジス川流域で相次いで独立に発明されました。