「人間って、なんですか」。
エンタメの顔をしながら、この問いを大真面目に突きつけてくるマンガの系譜があります。
今回はその代表二作。
四半世紀の時を隔てて響き合う、『寄生獣』と『進撃の巨人』です。
どちらもぼくのおすすめリストの常連で、初めて読む人と感想を語り合いたくてうずうずする類の作品です。
岩明均『寄生獣』は1988年から講談社の『アフタヌーン』系列で連載されました。
ある夜、空から降ってきた寄生生物が人類に取りつき、脳を乗っ取って人間を捕食し始める。
高校生の泉新一は、侵入された部位が右手だったために脳を守られ、寄生生物「ミギー」と一つの体で共生することになります。
この設定の天才性は、敵が右手にいることです。
人類の捕食者と、毎日会話しなければならない。
ミギーは冷徹な合理主義者で、情も善悪もなく、しかし知的で誠実です。
新一はミギーと暮らすうちに、人間の側の欺瞞——自分たちも他の生物を「捕食」して生きていること、種としての人間のエゴ——を直視させられていく。
環境問題や生命倫理を説教くさく語らず、共生関係のドラマだけで考えさせる。
完結から30年経っても古びない、思考実験型マンガの金字塔です。
岩明均の絵は、決してうまいタイプではありません。
でも、静かなコマ運びの中で急に訪れる暴力と喪失の演出は、この絵柄でなければ出ない冷たさがあります。
第17回で紹介した『ヒストリエ』と同じ作者だと知ると、人間という生き物への同じ視線が、現代SFと古代史の両方を貫いていることがわかります。