博士論文というものは、ふつう、地味です。
先行研究を丁寧になぞり、小さな新発見をひとつ積み上げる。
それが標準的な博士論文で、それでいいんです。
ところが1924年、パリ大学に提出された一本の博士論文は、様子が違いました。
内容があまりに大胆すぎて、審査員たちが判断に困り、よその大物に意見を求める騒ぎになったんです。
意見を求められた大物とは、アインシュタイン。
そしてこの論文は5年後、史上まれに見る快挙を成し遂げます。
博士論文の内容そのものへの、ノーベル物理学賞。
書いたのは、ルイ・ド・ブロイ。
フランスでも指折りの名門貴族、ブロイ公爵家の末裔でした。
ド・ブロイ家は、代々フランスに元帥や首相を輩出してきた大貴族です。
ルイ自身も、家の伝統に沿って外交官を目指し、大学ではまず歴史学を修めました。