1925年のクリスマス休暇。
チューリッヒ大学の物理学教授エルヴィン・シュレーディンガー、38歳は、スイスアルプスの保養地アローザの山荘にこもりました。
同行者がいました。
ウィーン時代の女友達と伝えられていますが、誰だったのかは、いまだに特定されていません。
科学史家たちが本気で調査しても、わからなかった。
量子力学史の「謎の貴婦人」です。
わかっているのは、結果だけ。
この休暇のあいだに、シュレーディンガーは物理学史に残る方程式を作り上げました。
現代の物理学科の学生が最初に叩き込まれる、あの「シュレーディンガー方程式」です。
同僚の数学者ワイルは、のちに冗談めかしてこう評しました。
「あの仕事は、人生の遅い時期に訪れた、色恋の爆発の産物だ」。
今回は、量子力学のもうひとつの誕生の話です。