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なぜ人は、神を語ったのか 第26回

総括 — 人は、物語る動物である

終章 物語る動物

最終回です。
まず、26回の旅の地図を広げ直します。

第1部で、世界の始まり方をくらべました。
産む日本、奪い合うギリシャ、殺された巨人の北欧、そして粘土板の最古の物語たち。
洪水の謎からは、神話に系統樹があるという世界神話学の仮説を学びました。
第2部は日本の神々。
岩戸の前の宴会、オロチと鉄の川、敗者を祀る国譲り、岩を返して花を選んだ寿命の起源、そして月の神の空白。
第3部で世界を回りました。
人間くさいオリュンポス、滅びを知って戦う北欧、ブッダさえ取り込むインド、神話を歴史に編集した中国。
第4部は英雄の文法。
帰還しないヤマトタケル、怪物退治のチェックリスト、ハリウッドを制した設計図、秩序を壊すいたずら者。
第5部で、神話が今も生きている現場——祭りという再演装置、近所の神社のローカル神話、神々の転職先であるエンタメ産業、そして野生の論理——を歩きました。

そのうえで、最初の問いに戻ります。
なぜ人は、神を語ったのか。

ぼくの答えは、こうです。
物語ることでしか、人は世界に居場所を作れなかったから。

裸の宇宙は、人間に何の説明もくれません。
世界はなぜあるのか、なぜ理不尽が襲うのか、死んだらどうなるのか——問いだけがあって、答えのない世界は、住むには寒すぎる。
だから人は、始まりを語り、神々を配置し、死の由来を語り、自分たちの系譜を天に接続しました。
神を語るとは、宇宙に住所を書き込む作業だったんです。
しかも第25回で見たとおり、それは幼稚な空想ではなく、手持ちの材料で矛盾を考え抜く、精密な知的作業でした。

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