予告どおり、いちばん頭を使う回です。
でも安心してください。
道具はぜんぶ、これまでの24回で配ってあります。
20世紀の半ばまで、こういう見方が普通でした。
神話は未開の心の産物であり、論理的に考えられない人々の、素朴な空想である。
科学が進めば神話は消える——。
この見方を根底からひっくり返したのが、フランスの人類学者クロード・レヴィ=ストロースです。
彼は世界中の神話を比較して、こう結論づけました。
神話は非論理どころか、極めて精密な論理でできている。
ただしその論理は、科学の論理とは別の種類のものだ。
彼はそれを「野生の思考」と呼びました。
レヴィ=ストロースの鍵概念のひとつが、ブリコラージュ。
日本語にすると「器用仕事」です。
エンジニアは、設計図を描き、目的に合わせて専用の材料と道具を揃えます。
一方、器用人は違います。
納屋にある「ありあわせのもの」——余った板、古い針金、壊れた機械の部品——を組み合わせて、目の前の問題を解決してしまう。
レヴィ=ストロースによれば、神話を作る思考はこの器用仕事です。
材料は、身の回りの具体物。
太陽、月、狼、蛇、岩、花。
抽象概念の代わりに、手持ちの具体物を組み合わせて、世界の大問題を考える。
この講座で見てきたものを思い出してください。
第10回、寿命の起源は「岩と花」で考えられていました。
永遠とは何か、美とは何かという抽象的な大問題を、岩の硬さと花の散りやすさという、誰でも知っている具体物の対比で処理している。
第4回の北欧は、世界の構造を一本の樹で考えました。
これがブリコラージュです。
素朴どころか、抽象語彙なしで形而上学をやってのける離れ業なんです。