第15回でラグナロクを学んだあなたは、もう気づいているはずです。
世界最大の映画シリーズのひとつが、北欧神話をほぼそのまま使っていることに。
マーベル映画のソーは雷神トール、その義弟は今日この講座で散々見てきたトリックスターのロキ。
舞台はアスガルド、父はオーディン。
虹の橋も、終末ラグナロクも、そっくり映画に持ち込まれました。
ギリシャ神話からはワンダーウーマンがアマゾンの戦士として生まれ、ゼウスやアレスがスクリーンを歩き回る。
二千年前に神殿で祀られていた神々は、現代、映画館に「転職」したわけです。
日本も負けていません。
ジブリの『もののけ姫』は、森の神を人が殺すという、神殺しの神話を正面からやった映画です。
しかも舞台は、たたら製鉄の村。
第8回でオロチ退治の背景として読んだ、あの鉄と森の対立構図が、そのまま映画の骨格になっています。
『千と千尋の神隠し』の湯屋に集うのは、まさしく八百万の神々。
ゲームに目を移せば、召喚獣の名簿は神話の名鑑です。
オーディンにシヴァにバハムート。
ゼルダも女神の神話から始まり、神々を仲間にする学園ものまである。
現代エンタメ産業は、人類史上最大の神話の引用者です。
さて、今回は楽屋側から話せる回です。
キャラクターと物語を作って商売しているぼくが、実務の言葉で「なぜ神話を借りるのか」を説明します。
理由は四つあります。
第一に、検証済みの物語エンジンだから。
第19回で見たとおり、神話の型は数千年の淘汰を生き残った「面白さの進化の産物」です。
新作の物語は当たるかどうか賭けですが、神話の骨格は何千年も人類の心を掴み続けた実績がある。
使わない手はありません。