その哲学者は、家を持たず、大甕(かめ)を住処にして日向ぼっこをしていました。
大王は言います。
「望みを言え。なんでも叶えてやろう」。
哲学者の答えは、こうでした。
「そこをどいてくれ。日陰になる」。
男の名はディオゲネス。
供の者たちは無礼に凍りつきましたが、大王は笑ってこう言ったと伝えられています。
「もし私がアレクサンドロスでなかったら、ディオゲネスになりたかった」。
今回は、この痛快な変人を入り口に、「生き方の技術」になった哲学の話をします。
ソクラテスたちの舞台だったポリス、つまり都市国家は、市民が顔見知りの小さな世界でした。
「良き市民として生きること」と「良く生きること」が、ほぼ重なっていた時代です。