答えは、バグダッドです。
もしイスラーム世界の学者たちがいなかったら、ギリシャ哲学の多くは散逸し、ヨーロッパの大学も、ルネサンスも、たぶん今の形では存在していません。
西洋哲学史の真ん中に、巨大な「イスラームの中継地点」があるんです。
世界史講座でイスラーム文明の爆発を見た方は、今回はその哲学編だと思ってください。
知のリレーの物語です。
8世紀に建設された新都バグダッドは、あっという間に世界最大級の都市になりました。
そこでカリフたちが始めたのが、国家事業としての翻訳です。
「知恵の館」と呼ばれる研究機関に、ギリシャ語、シリア語、ペルシャ語、サンスクリット語の書物が集められ、次々にアラビア語へ翻訳されていきました。
プラトン、アリストテレス、エウクレイデス、プトレマイオス。
良い写本には、重さと同じだけの金が支払われたという逸話が伝えられるほどの熱狂でした。