その宣告文が、すさまじいんです。
昼も夜も呪われよ、寝るときも起きるときも呪われよ。
誰も彼と口をきいてはならず、同じ屋根の下にいてはならず、彼の書いたものを読んではならない——。
共同体からの、完全な抹消宣言です。
のちに刃物で襲われ、外套を切り裂かれる事件まで起きたと伝えられています。
青年の名は、スピノザ。
罪状は、とんでもない神学思想を抱いたこと。
ところが本人は、呪われたその後の人生を、驚くほど穏やかに生きました。
レンズを磨いて質素に暮らし、名声も教授職も断り、訪ねてくる人には誰にでも礼儀正しく。
哲学史上もっとも過激な思想を、哲学史上もっとも穏やかな人が抱えていた。
今回は、この最高のギャップの持ち主の話です。
スピノザの中心思想は、一言で言えます。
「神即自然(しんそくしぜん)」。
神とは、すなわち自然である。