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物語という、最古の発明 第3回

ホメロス — 文字のない時代、物語は暗唱された

第1部 物語の誕生

合わせて2万7千行の大長編を、古代ギリシャの詩人たちは「暗唱」で運んでいました。

紙もない、本もない、文字すら普及していない時代。
物語の保存媒体は、人間の脳みそだけでした。
今回は、人類が「記憶」だけで大長編を数百年運んだ、その驚異の技術の話です。

二大叙事詩の作者と伝えられるのが、ホメロスです。

盲目の詩人だったと伝えられていますが、実は、いつどこで生まれた何者なのか、ほとんど何も分かっていません。
そもそも一人の人物だったのか、それとも吟遊詩人たちの集団的な営みに後から付けられた名前なのか。
これは「ホメロス問題」と呼ばれ、二百年以上議論が続いています。

ぼくらにとって大事なのは、どちらにしてもこの詩が「歌い手たちのリレー」で磨かれたという事実です。
一人の天才が机で書いたのではなく、無数の歌い手が観客の前で歌い、ウケた表現が生き残り、数百年かけて結晶した。
いわば、人類最初のオープンソース開発です。

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