8世紀の初め、日本列島でほぼ同時期に、二つの記念碑が生まれました。
語り部の暗唱から書き起こされた神話と歴史の書、『古事記』。
天皇から国境警備の兵士まで、あらゆる身分の歌を集めた歌集、『万葉集』。
物語と歌。
日本語の文学は、この二本立てで産声を上げました。
『古事記』の成立事情は、第3回のホメロスを思い出させます。
序文によれば、天武天皇が稗田阿礼という人物に命じて、諸家に伝わる神話と歴史を「誦み習わせ」ました。
つまり、暗唱させたんです。
阿礼は一度目にしたものは忘れなかったと伝えられる、記憶の達人でした。
その後、時代が下って元明天皇の命により、太安万侶が阿礼の誦むところを筆録します。
和銅5年(712年)、こうして現存する日本最古の書物が完成しました。