ダンテ・アリギエーリ。
13世紀末から14世紀初頭のイタリア、フィレンツェの人です。
彼の人生には、大きな喪失が二つあります。
ひとつは、ほとんど言葉を交わしたことのない女性への、生涯の恋。
もうひとつは、二度と帰れなかった祖国です。
この二つのどん底が、世界文学の最高峰のひとつ『神曲』になりました。
ダンテがベアトリーチェという少女に出会ったのは、九歳のときと伝えられます。
すれ違って、挨拶を交わした。
記録に残る接点は、ほぼそれだけです。
二人はそれぞれ別の相手と結婚し、ベアトリーチェは二十代半ばの若さで世を去ります。