18世紀初頭のイングランドで、小説という若いメディアが二つの武器を手に入れました。
ひとつは、本当にあった話のふりをする技術。
もうひとつは、面白い話の顔をして社会に毒を盛る技術。
前者の名人がデフォー、後者の名人がスウィフト。
『ロビンソン・クルーソー』と『ガリバー旅行記』です。
1719年に出版された『ロビンソン・クルーソー』の初版には、著者としてデフォーの名前が載っていませんでした。
表紙にあるのは「ロビンソン・クルーソー本人が書いた」という体裁です。
序文では編者を名乗る人物が、これは事実の記録である、と言い切ります。
中身も徹底していて、日付、緯度、積み荷の目録、島で作った道具の手順まで、記録文書のような細部で埋め尽くされている。
書き出しからして、こうです。