ジェイン・オースティン『高慢と偏見』、1813年。
一見、当たり前のことを言っているようで、これは強烈な皮肉です。
本当に妻を欲しがっているのは、独身男性でしょうか。
違います。
娘を売り込みたい母親たちと、結婚しか生計の道がない娘たちのほうです。
その現実をひっくり返して「男が欲しがっている」と澄まして書く。
この一文に、オースティンの全部が入っています。
オースティンが生きたのは、ナポレオン戦争の時代です。
前回のウェルテル熱が大陸を席巻し、英雄と革命が歴史を揺らしていた時代に、彼女が書いたのは、イングランドの田舎の社交界でした。
数家族の人間関係、舞踏会、お茶、散歩、そして結婚をめぐる駆け引き。
彼女自身、自分の題材を「二寸四方の象牙に細筆で描くようなもの」と手紙で評しています。
狭い、と思うでしょうか。
でもこの狭さは、戦場と同じくらい真剣な戦場なんです。