1849年12月、ペテルブルクの練兵場。
28歳のドストエフスキーは、死刑囚として刑場に立っていました。
罪状は、体制批判の読書会に参加したこと。
囚人たちは白い死装束を着せられ、最初の組が柱に縛られ、銃を持った兵士が整列する。
ドストエフスキーは次の組でした。
そのとき、馬が駆け込んできます。
皇帝の恩赦。
死刑は、シベリア流刑に減刑されました。
じつはこの処刑は、最初から中止と決まっていた見せしめの儀式だったと伝えられます。
でも、縛られる寸前まで行った本人にとっては、正真正銘の死でした。
世界文学でいちばん深い小説群は、この数分間から始まります。
数分後に死ぬと確信した人間には、世界がどう見えるのか。