マルセル・プルースト『失われた時を求めて』。
全7篇、原稿にしておよそ3000ページ。
ギネスブックが「世界最長の小説」として認定したこともある、文学史上の最高峰のひとつです。
これほど巨大な物語の出発点は、戦争でも革命でもありません。
紅茶に浸した、ひとかけらのマドレーヌでした。
そして今回は、第8回で張った伏線をついに回収します。
この20世紀フランスの大聖堂と、千年前の京都で書かれた『源氏物語』の話です。
物語の序盤に、文学史でいちばん有名な「お茶の時間」があります。
冬の日、疲れて帰宅した語り手に、母親が紅茶と、マドレーヌという貝殻形の焼き菓子を出してくれます。
彼は何気なく、マドレーヌのかけらを紅茶に浸し、口に運ぶ。
その瞬間、説明のつかない歓喜が体を貫きます。