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物語という、最古の発明 第29回

ジョイスとウルフ — 意識の流れ、一日を書いて宇宙にする

第5部 20世紀前半 実験と不安の時代

20世紀の初め、小説家たちはあることに気づき始めました。
人間の頭の中は、きちんとした文章では動いていない、と。

意識の実際は、連想が飛び、記憶が割り込み、目の前の看板と十年前の後悔が同居する、途切れない流れです。
ならば小説も、その流れのまま書けないか。

この無謀な実験に踏み込んだ二人が、ジョイスとウルフでした。
どちらも選んだ舞台は、英雄の大遠征ではなく、都市のありふれた一日です。

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、設定だけ聞くと冗談のようです。

1904年6月16日。
アイルランドのダブリンで、広告取りの中年男レオポルド・ブルームが、朝起きて、街を歩き回り、夜中に帰宅する。
それだけです。
たった一日、大事件なし。
それが千ページ級の大作になっています。

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