20世紀初頭、日本の仙台。
医学を学ぶひとりの中国人留学生がいました。
名を周樹人。
のちの魯迅です。
彼はある日、授業の合間に幻灯、つまりスライド上映を見ます。
映っていたのは、日露戦争のさなか、ロシア側のスパイとして日本軍に処刑される同胞と、それをただ取り囲んで眺めている中国人の群衆でした。
処刑される者より、見物している者たち。
その表情の空虚さに、彼は打ちのめされたと、後年みずから書いています。
体がいくら丈夫でも、精神がこれでは意味がない。
必要なのは、体を治す医学ではなく、精神を変える文学だ。
彼は医学を捨て、ペンを取りました。
中国近代文学は、この転向から始まります。
魯迅の代表作『阿Q正伝』の主人公は、村の最底辺で生きる日雇いの男、阿Qです。