古事記から始まって、源氏、平家、芭蕉、戯作、漱石、芥川と太宰。
この講座が張ってきた日本文学の縦糸は、20世紀後半、ひとつの到達点を迎えます。
日本の美意識が、翻訳を通じて、世界の共通語になったんです。
その主役が、川端康成、谷崎潤一郎、三島由紀夫の三人です。
なお、三人の作品はいずれも著作権が生きているため、この回も講座の掟に従い、原文の引用はせず、内容の紹介でお話しします。
1968年、川端康成は、日本人として初めてノーベル文学賞を受けました。
代表作『雪国』の書き出しは、日本文学でも指折りの有名な一節です。
国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国だった、という趣旨のあの冒頭。
トンネルの闇を抜けた瞬間、視界が一面の白に切り替わる。
まるで映画のカットのような場面転換で、読者は日常から、雪に閉ざされた別世界へ運ばれます。