問題です。
「男の無表情な顔」のカットの次に、「スープ皿」のカットをつなぐと、観客には何が見えるでしょうか。
答えは「空腹をこらえる男」。
同じ顔の次に「棺の中の女性」をつなぐと「悲しみに耐える男」に見え、「遊ぶ子ども」をつなぐと「優しく見守る男」に見える。
顔のカットは、全部同じものなのに、です。
これは1920年代のソ連で実際に行われた実験で、「クレショフ効果」と呼ばれます。
意味は、カットの中にあるのではない。
カットとカットの「間」で、観客の頭の中に生まれる。
革命後のソ連の若い映画人たちは、この発見を徹底的に理論化しました。
編集を、感覚ではなく科学にしようとしたわけです。
彼らの理論を「モンタージュ理論」と言います。
その総本山が、セルゲイ・エイゼンシュテイン。
そして理論の実証実験にして映画史の頂点のひとつが、『戦艦ポチョムキン』(1925年)です。
撮ったとき、エイゼンシュテインは27歳でした。