この講座で何度か予告してきた、いちばん重い回です。
映画が、戦争の武器になった話。
第4回のグリフィスで、映画には人の心を動かしてしまう力があることを見ました。
第9回のポチョムキンでは、その力に敵陣営の宣伝大臣ゲッベルスが目をつけたところまで話しました。
1930年代、その予告どおりのことが起きます。
ナチス・ドイツは、映画を国家の中枢に据えた最初の政権でした。
政権掌握の翌年には映画産業を国家管理下に置き、宣伝省が製作を仕切る。
そこから生まれた頂点が、レニ・リーフェンシュタール監督の2本です。
『意志の勝利』(1935年)は、ナチス党大会の記録映画。
整然と行進する数十万人、空から降りてくる総統の飛行機、夜空を柱のように照らすサーチライト。
『オリンピア(民族の祭典/美の祭典)』(1938年)は、ベルリン五輪の記録映画。
移動カメラ、水中撮影、望遠、スローモーションの飛び込み選手たち。
いまのスポーツ中継の撮り方の語彙は、かなりの部分がこの映画の発明です。