今回は、ぼくが「絶対に入れる」と決めていた監督です。
小津安二郎。
世界の映画監督たちに「史上最高の映画は?」と聞いたアンケート(英国映画協会が10年ごとにやっている、映画界でいちばん権威のある投票です)で、2012年に1位に選ばれたのは、『市民ケーン』でも『ゴッドファーザー』でもありませんでした。
小津の『東京物語』(1953年)です。
尾道に住む老夫婦が、東京の子どもたちを訪ねる。
子どもたちは忙しく、両親をもてあます。
老夫婦は少し寂しく帰り、母が死ぬ。
それだけの映画です。
カーチェイスも、どんでん返しも、悪人すらいない。
なのに、世界中の映画監督がこれを頂点に挙げる。
「何も起きないのに泣ける」どころか、「何も起きないから泣ける」映画。
今回は、この不思議の正体を解剖します。