1945年、ローマ。
ムッソリーニの映画都市チネチッタは連合軍に接収され、撮影所は難民キャンプになっていました。
セットなし。
照明なし。
フィルムすら満足にない。
その何もない場所から、映画史の革命が起きます。
ロベルト・ロッセリーニの『無防備都市』は、ドイツ軍占領下の抵抗運動を、その記憶がまだ生々しい本物のローマの街角で撮りました。
フィルムは闇市でかき集めた切れ端。
出演者の多くは素人。
スタジオの照明で磨き上げたハリウッドの画面とは真逆の、ザラザラした「現実の手触り」。
これが世界を打ちました。
作り物の夢ではなく、いま目の前にある人生を撮る。
「ネオレアリズモ(新しい現実主義)」の誕生です。
ネオレアリズモの頂点が、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『自転車泥棒』(1948年)です。