アルフレッド・ヒッチコックは、映画監督として史上初めて「顔と名前がブランドになった」人です。
でっぷりした体の横顔のシルエット。
自作への数秒のカメオ出演。
テレビ番組「ヒッチコック劇場」のホスト。
「サスペンスの神様」という、これ以上ない分かりやすい看板。
作家でありながら、セルフブランディングの天才でもありました。
いまで言う「顔出しクリエイター」の元祖です。
でも本題は中身です。
ヒッチコックがやったのは、観客の不安の工学でした。
どうすれば人はハラハラするのか。
それを感覚ではなく、設計として考え抜いた人です。
有名な「爆弾理論」があります。
テーブルの下に爆弾があって、いきなり爆発する。
これは「驚き」で、数秒で終わる。
でも、観客にだけ先に爆弾を見せておいて、何も知らない登場人物たちが雑談を続けたら?
観客は「早く逃げて!」と、爆発までの全時間ハラハラし続ける。
これが「サスペンス」。
情報を観客にいつ、どれだけ渡すか。
サスペンスとは情報設計である、という発見です。