監督の名前がそのまま形容詞になった人は、映画史でも数えるほどしかいません。
「フェリーニ的(フェリニエスク)」は、その代表です。
意味はだいたいこうです。
猥雑で、祝祭的で、悪夢のようで、サーカスのようで、懐かしくて、ちょっと悲しい。
要するに「夢そのもの」。
フェデリコ・フェリーニは、自分の夢と記憶を、そのままスクリーンで上映することに成功した唯一の監督です。
経歴が面白いんです。
フェリーニの出発点は、第18回でやったネオレアリズモのど真ん中。
『無防備都市』の脚本チームにいました。
つまり「現実を撮る」運動の中心から出発して、キャリアを重ねるごとに「夢を撮る」方向へ振り切っていった。
リュミエールからメリエスへ、一人で歩き直したような人です。
『道』(1954年)で世界的名声を獲得し、『甘い生活』(1960年)でスキャンダラスな大ヒット。
ちなみに『甘い生活』に出てくるゴシップカメラマンの名前「パパラッツォ」は、そのまま「パパラッチ」の語源になりました。
映画が一般名詞を生んだ、羅生門エフェクトの仲間です。