今回は、映画史と音楽史の合流点です。
音楽史講座の番外編「涙腺決壊音楽選集」を読んでくれた方は、ルグランとモリコーネの再登場になります。
今度は「映画側」から、同じ山を登り直しましょう。
映画音楽とは何か。
ぼくの定義は「観客が気づかない演技者」です。
いい映画音楽は、観ている最中はほとんど意識されません。
でも、消してみると分かる。
緊張が消え、涙が引っ込み、画面がただの映像に戻る。
音楽は、画面に映らないところで感情の演技をしているんです。
第13回の『M』の口笛から、第19回の『サイコ』のバイオリンまで、この講座でもずっと脇役として登場してきました。
今回は、その脇役が主役です。
まず、ミシェル・ルグラン。
ジャック・ドゥミ監督と組んだ『シェルブールの雨傘』(1964年)は、映画史でもっとも大胆な音楽実験のひとつです。