第3部の締めは、交渉です。
ゲーム理論が生まれたときからの主要テーマで、そして多くの人がいちばん苦手にしている「相手のいる意思決定」でもあります。
交渉と聞くと、値切りと駆け引きを思い浮かべます。
それは交渉の半分、それも後半だけです。
交渉研究の基本は、交渉を二つの局面に分けます。
価値創造——お互いの持ち物と目的を突き合わせて、パイ自体を大きくする局面。
そして分配——大きくなったパイを分ける局面。
下手な交渉は、いきなり分配から始まります。
パイは固定だと思い込んでいるから、1円の譲歩が1円の損に見えて、押し合いになる。
第15回でやった「ゼロサムの見間違い」が、交渉の席でいちばん高くつくんです。
うまい交渉は、順番が逆です。
先に「二人だと何ができるか」を太らせる。
パイが3倍になるなら、取り分の比率で多少譲っても、絶対額は増える。
交渉相手は、分配の敵である前に、価値創造の共犯者です。