第4部のテーマは、視点の引っ越しです。
ここまでは盤上のプレイヤーとして、どう打つかを考えてきました。
ここからは盤の外に立ちます。
ゲームのルールそのものを設計する側の話です。
ゲーム理論の基本形は、「ルールが与えられたとき、プレイヤーはどう動くか」を予測することでした。
メカニズムデザインは、この問いを逆さにします。
「プレイヤーにこう動いてほしい。では、どんなルールならそうなるか」。
望む結果から逆算して、ゲームの仕組み(メカニズム)を設計する。
だから「逆ゲーム理論」とも呼ばれます。
この分野を切り拓いたハーヴィッツ、マスキン、マイヤーソンの3人は、2007年のノーベル経済学賞を受賞しました。
抽象的に聞こえますが、古典的な実例を見れば一瞬でわかります。
ケーキ切りの知恵。
兄弟が1つのケーキを取り合っている。
親が審判として毎回介入するのは疲れます。
そこでルールを1つ入れる。
「一人が切り、もう一人が先に選ぶ」。
切る側は、自分に不利な切り方をすると相手に大きいほうを取られるので、全力で正確に半分に切ります。
誰も監視していないのに、利己心がそのまま公平を実現する。
これがメカニズムデザインの発想です。