第1部は「贈与の経済学」。
この講座の背骨です。
最初の舞台は南太平洋、ニューギニア東方のトロブリアンド諸島。
案内人は、ブロニスワフ・マリノフスキーという人類学者です。
マリノフスキーは第一次大戦のさなか、トロブリアンド諸島に長期滞在し、島民の言葉を覚え、一緒に暮らしながら調査しました。
いまでは当然とされる「現地に住み込んで内側から観察する」方法——参与観察——を確立した人物です。
そこで彼は、奇妙な慣習に出会います。
「クラ」と呼ばれる交易です。
島民たちは、丸木舟で外洋に乗り出します。
サメも嵐もある危険な航海です。
命がけでたどり着いた別の島で、彼らが交換するのは、食料でも道具でもありません。
赤い貝の首飾りと、白い貝の腕輪。
それだけです。