前回、贈与には「返す義務」がセットだと学びました。
今回はその義務の、いちばん不思議な部分に潜ります。
なぜ、返さないと「落ち着かない」のか。
規則で決まっているわけでもないのに、もらいっぱなしの状態は、胸のどこかがざわざわする。
あの感覚の正体です。
モースが『贈与論』の鍵として引いたのが、ニュージーランドの先住民マオリの賢者タマティ・ラナイピリの語りです。
彼はこう説明しました。
贈り物には「ハウ」——モノの霊——が宿っている。
ハウは、もとの持ち主のところへ帰りたがる。
だから贈り物を受け取った者は、それを留めてはいけない。
留めれば、ハウが災いをなす。
お返しをすることで、ハウはめぐりめぐって持ち主のもとへ帰る。
「霊なんて非科学的な」と笑うのは簡単です。
でも、まず自分の胸に手を当ててみてください。