ここまでの贈与は、一対一のやり取りでした。
今回はスケールを上げます。
共同体まるごとを巻き込む、贈与の祭典の話です。
北アメリカ北西海岸の先住民、クワキウトルなどの人々には、「ポトラッチ」と呼ばれる盛大な宴会の制度がありました。
首長が、他の集団の人々を大量に招きます。
そして客たちに、ごちそうを振る舞い、毛布や銅板や工芸品といった財産を、気前よく配りまくる。
配れば配るほど、主催者の名誉と地位は上がります。
招かれた側の首長は、面目を保つため、後日さらに盛大なポトラッチを開いて返さなければならない。
贈与の競争です。
エスカレートすると、とんでもないことが起きます。
配るだけでは足りず、財産を客の目の前で破壊してみせる。
貴重な銅板を叩き割り、毛布や油を燃やす。
「わたしはこれを失っても平気なほど豊かだ」という、富の見せつけです。
19世紀末にこれを見たカナダ政府は、「勤労意欲を損なう浪費」としてポトラッチを法律で禁止しました(この禁止は20世紀半ばまで続きます)。
貯めて増やすのが正しいとする近代の目には、狂気の沙汰に映ったわけです。