前回学んだ通過儀礼の三幕構成——分離・過渡・統合。
今回は、その真ん中の幕にズームインします。
イギリスの人類学者ヴィクター・ターナーは、アフリカ・ザンビアのンデンブの人々の儀礼を調査するうちに、この「どっちつかずの中間状態」にこそ、人間社会の秘密が詰まっていると気づきました。
彼はこの状態をリミナリティ(敷居の状態)と名づけます。
成人式のさなかの少年を考えてみてください。
彼はもう子どもではありません。
でも、まだ大人でもない。
隔離小屋にいる彼は、名前を奪われ、地位を奪われ、ときに性別の区別さえ曖昧にされます。
社会の分類のどこにも属さない、「何者でもない」存在です。
第10回で学んだとおり、分類に収まらない存在は、危険で神聖なものとされます。
だから儀礼の中間状態にいる者は、隔離され、特別扱いされる。
ここまでは復習です。
ターナーの発見はここからです。
この「何者でもない」状態に置かれた者たちのあいだに、異様に濃い絆が生まれる。
一緒に成人式の試練をくぐる少年たちは、地位も序列も剥ぎ取られた「ただの人間」同士として向き合います。
ターナーはこの、構造から自由になった生身の人間同士の結びつきをコムニタスと呼びました。