ウサギとカエルが相撲を取り、投げ飛ばされたカエルが仰向けにひっくり返る。
まわりのカエルたちは大口を開けて笑っている。
京都・高山寺に伝わる絵巻、鳥獣人物戯画。
描かれたのは平安末から鎌倉のころ、いまから約八百年前です。
教科書では「日本最古のマンガ」と紹介されることが多く、マンガ史の本はたいていここから始まります。
でも今回は、あえて意地悪な問いから入ります。
鳥獣戯画は、本当にマンガのご先祖さまなのか。
鳥獣戯画をマンガの祖とする説には、たしかに説得力があります。
動物を擬人化するキャラクター表現。
墨の線だけで動きを描く筆さばき。
カエルの口から出る息のような線は、現代の効果線にそっくりです。
右から左へ巻物を繰っていくと場面が流れていく感覚は、コマを読み進める体験に近い。
ただ、美術史の側からは昔から異論があります。
鳥獣戯画には、マンガを成立させている大事な要素がいくつも欠けているんです。