1970年3月、東京・講談社の講堂で、ある葬儀が営まれました。
弔われたのは、力石徹。
実在の人物ではありません。
マンガ『あしたのジョー』の登場人物です。
主人公ジョーのライバルだった力石が作中で死んだとき、読者から悲しみの声が殺到し、詩人・寺山修司の呼びかけで本当に葬式が行われた。
数百人が集まり、祭壇にはリングが組まれ、僧侶が読経した。
マンガのキャラクターの死を、社会が現実の喪失として受け止めた最初の大事件です。
今回は、この熱狂を設計した男の話。
原作者・梶原一騎です。
梶原一騎は、絵を描きません。
物語だけを書く、マンガ原作者です。
原作と作画の分業自体は以前からありましたが、梶原はこの仕組みで時代を制圧した最初の人でした。
『巨人の星』(作画・川崎のぼる、1966年マガジン連載開始)、『あしたのジョー』(作画・ちばてつや、高森朝雄名義、1968)、『タイガーマスク』『空手バカ一代』。
60年代末のマガジンの快進撃は、ほぼこの人の脚本工場が支えています。