1970年代の初め、出版業界にはこんな空気が流れていました。
「手塚治虫は、もう古い」。
信じられないかもしれませんが、本当の話です。
劇画の重さが時代を制し(第6回)、梶原一騎の熱が少年誌を支配し(第8回)、手塚的な丸い絵と理想主義は「ひと昔前のもの」扱いされ始めていた。
追い打ちをかけるように1973年、手塚が経営していたアニメスタジオ・虫プロダクションが倒産します。
莫大な借金。
人気の低迷。
40代半ばの神様は、キャリアのどん底にいました。
今回は、そこからの復活戦の話です。
そしてこの復活戦の中でこそ、手塚治虫の本当の凄みが出ます。
1973年、手塚は『週刊少年チャンピオン』で新連載を始めます。
無免許の天才外科医が法外な報酬で手術を請け負う一話完結の医療ドラマ、『ブラック・ジャック』です。