2020年、日本の書店から、あるマンガが消えました。
売り切れたんです。
『鬼滅の刃』の既刊全巻が、何度重版しても店頭に並ばない。
この年の年間コミック売上ランキングは、上位を鬼滅の各巻がほぼ独占するという前代未聞の風景になりました。
シリーズの年間販売部数は8000万部を超えたと報じられ、単一作品として出版史に残る記録です。
第5部の最初は、この現象の解剖から始めます。
鬼滅のヒットは、ただ大きかっただけではありません。
マンガの売れ方の方程式が変わったことを示す事件でした。
原作は吾峠呼世晴が週刊少年ジャンプで2016年から連載した全23巻。
大正時代、家族を鬼に殺された少年・炭治郎が、鬼になった妹を人間に戻すために剣士となる物語です。
大事な事実として、連載中盤までの鬼滅は、ジャンプの看板というより中堅の位置でした。
人気はあるが、社会現象の気配はない。
それが2019年のテレビアニメ化で一変します。
制作会社の映像美、とりわけ第19話の戦闘シーンが放送直後からSNSで爆発的に共有され、アニメから原作へ、新規読者が逆流し始めました。