2019年、ある新連載がマンガアプリで始まりました。
殺し屋の夫、超能力者の娘、そして正体を隠したスパイの父が、互いの秘密を知らないまま家族を演じる物語。
『SPY×FAMILY』です。
この作品が載ったのは、週刊少年ジャンプ本誌ではありません。
集英社のアプリ「少年ジャンプ+」。
紙の雑誌に載らないまま、単行本は数千万部級に達し、アニメ化で世界的な人気作になりました。
紙を経由しないジャンプ看板作品の誕生です。
今回は、マンガの売り場と入り口が丸ごと作り替えられた2010年代以降の話をします。
第9回で、ジャンプという雑誌が新人発掘とアンケートの探索システムだった話をしました。
マンガアプリは、その機能をデジタルで再実装したものです。
2014年に始まったジャンプ+を例にすると、仕組みはこうなっています。
毎日更新で作品を無料公開し、閲覧数とコメントという即時の反応データで人気を測る。
新人は賞や持ち込みだけでなく、投稿サービス経由でもデビューできる。
『怪獣8号』のようなアプリ発ヒットが続き、「本誌の控え室」ではなく「もう一つの本誌」になりました。
紙の雑誌が長い衰退を続ける一方で、マンガ市場全体は電子の成長で過去最高を更新し続けています。
マンガは衰退していません。
紙が電子に置き換わりながら、市場はむしろ大きくなったんです。