「奥山に、猫またといふものありて、人を食ふなる」。
これは700年前の随筆『徒然草』に出てくる一文です。
当時すでに「猫又」という妖怪の噂は、都の人々の会話に上っていました。
兼好法師はこの噂に続けて、夜道で猫又に襲われたと大騒ぎした男の正体が、実は飛びついてきた飼い犬だった、という笑い話を書いています。
700年前から、人は「身近な獣が化けるかもしれない」と本気で怖がり、同時にそれを笑い話にもしていた。
今日は、この化ける獣たちの話です。
化ける獣の代表格、まずは狸です。
分福茶釜、証城寺の狸囃子、そして各地の「狸に化かされた」話。
狸の化かし方には特徴があります。
木の葉をお金に変えて買い物をする、通せんぼうをする、腹鼓を打つ。
どこか間が抜けていて、実害が小さいんです。
狐の化かしが色香や富で人の欲を突く「怖い騙し」なのに対し、狸はいたずら小僧の系譜。
しくじって正体がばれ、詫びを入れる話も多い。