浦島太郎が行った竜宮城は、どこにあったでしょうか。
海の中、と答えたくなりますが、古い伝承では少し違います。
海の「彼方」です。
水平線の向こう、船でも行き着けない遠くに、時間の流れが違う豊かな国がある——。
今日は、日本人が思い描いてきた異界の地図を広げます。
海の彼方、そして地の底の話です。
古代の日本人は、海の彼方に常世という国を想定していました。
「常」の名のとおり、老いも死もない永遠の国。
豊穣と不老不死の理想郷です。
浦島太郎の物語で、竜宮城で数日過ごしたら地上では何百年も経っていた、というあの時間のずれは、常世が「時間の流れが違う場所」であることを示しています。
沖縄には、これと並行するニライカナイの信仰があります。
海の彼方にある神々の住む国で、年ごとに神がそこからやってきて豊穣をもたらし、また帰っていく。
琉球の祭りには、海の彼方から来訪する神を迎える儀式が今も残っています。
なぜ海の彼方だったのか。
島国の人間にとって、水平線は世界の縁でした。
そしてその縁の向こうから、実際にいろいろなものが流れ着いたんです。
見たこともない木の実、難破船の積み荷、外国の漂流者。
海は定期的に「向こう側からの贈り物」を届けてくる。
この経験が、彼方の豊かな国という想像を支えました。