桃太郎は、桃から生まれます。
かぐや姫は、竹から。
一寸法師は、指ほどの大きさで。
冷静に考えると、変です。
普通に生まれた子が鬼退治をしてもいいはずなのに、昔話の主人公たちは、そろいもそろって異常な生まれ方をする。
今日から最終第5部。
テーマは「語り」。
まずは、昔話という物語の文法を解剖します。
桃太郎の桃は、川を流れてきます。
ここまでこの講座を受けてきたあなたなら、もうピンと来るはずです。
川は境界です。
そして水の流れの上流、山の奥は異界です。
つまり川から流れてくるものは、異界からの来訪者なんです。
かぐや姫の竹も、光る竹は山の異界とこの世の接点です。
異常な誕生は、その子が「こちら側の普通の子ではない」——神の世界から遣わされた特別な存在であることの印です。
だから桃太郎は鬼に勝てます。
普通の村の子が鬼ヶ島に渡って勝てたら、そのほうが嘘くさい。
異界から来た子だから、異界のもの(鬼)と戦える。
異常誕生譚は、物語の説得力を支える理屈の柱です。
ちなみに桃という果物自体、古事記でイザナギが黄泉の国の追手に投げつけて撃退した、由緒正しい魔除けの果物。
桃から生まれた子が鬼を退治するのは、設定の段階で勝負がついているんです。