645年6月、飛鳥の宮殿。
朝鮮半島からの使節を迎える儀式の最中でした。
雨の降る中、庭には三韓の使者が並び、玉座には皇極天皇。
その傍らに、時の最高権力者・蘇我入鹿(そがのいるか)が座っています。
用心深い入鹿は、常に剣を手放さない男でしたが、この日は道化に言い含められて剣を外していました。
上表文の読み上げが始まる。
合図とともに斬りかかる手はずの刺客二人は、恐怖のあまり動けない。
読み上げ役は、予定が狂ったことに気づき、声が震え、汗が流れる。
不審に思った入鹿が「なぜ震えるのか」と問う。
そのとき、若き皇子が自ら躍り出て、入鹿に斬りつけました。
中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)、このとき二十歳前後。
深手を負った入鹿は、玉座の皇極天皇ににじり寄り、「わたしに何の罪があるのですか」と訴えます。
天皇は息子・中大兄に「これは何事か」と問い、中大兄は「入鹿は皇位を奪おうとしています」と答える。
天皇は無言で殿中に去り、入鹿はその場で斬り伏せられました。