日本史の文化には、はっきりした法則があります。
文化の主役が、時代とともに「下りて」いくんです。
古代の文化の主役は、天皇と貴族でした。
中世は、武士と僧侶。
そして江戸時代、ついに文化の主役は町人、つまり商人と職人になります。
文化の担い手が庶民まで下りてきた社会は、同時代の世界では稀でした。
今回は、その町人文化の二つの頂点、元禄文化と化政文化の話です。
文学史・美術史の講座と重なる人物も出てきますが、この講座では「なぜ町人が文化の主役になれたのか」という社会の仕組みから見ていきます。
17世紀末の元禄期、文化の中心は上方(京都・大坂)でした。
「天下の台所」大坂に全国の米と物産が集まり、豪商が育った時代です。
その豪商や町人たちの世界を、真正面から文学にしたのが井原西鶴でした。
『日本永代蔵』は、いわば「金持ち列伝」。
知恵と倹約と才覚でのし上がる商人たちを、皮肉と愛情込みで描きます。
『好色一代男』は恋愛遍歴もの。
テーマはカネと恋、つまり町人のリアルど真ん中です。
貴族の雅でも武士の忠義でもなく、「経済と欲望」が文学の主役になった。
これが画期でした。