1945年8月15日正午、ラジオから天皇の声が流れました。
玉音放送です。
「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」。
雑音まじりの難解な文語を、人々は直立して聴きました。
放送を聴いて初めて「戦争が終わった」と理解した人も、意味が分からず周囲に尋ねた人も多かったと伝えられます。
さて、この日をぼくらは何と呼んでいるでしょうか。
「終戦記念日」です。
「敗戦」ではなく「終戦」。
この言葉の選び方から、今回は始めます。
戦争は「負けた」のではなく「終わった」。
主語も責任もぼかした、この不思議な表現には、戦後日本の出発点の複雑さが凝縮されています。
負けを直視することへのためらいと、とにかく戦争が終わったことへの安堵。
その両方が、この二文字に入っている。
言葉の選び方は、時代の心理の史料なんです。
戦後日本の出発点は、文字通りの焼け跡でした。