1935年5月4日、ニューヨーク・タイムズ紙に、こんな見出しの記事が載りました。
「アインシュタイン、量子理論を攻撃」。
まだ論文が正式に出版される前の、フライング報道です。
アインシュタインは激怒して、「科学上の問題は学術誌の中でのみ議論されるべきだ」という抗議声明まで出しました。
それでも、世間が騒ぐのも無理はなかったんです。
世界でいちばん有名な科学者が、世界でいちばん成功しつつある理論に、正面から「不完全」の烙印を押そうとしている。
論文の著者は3人。
アインシュタイン、ポドルスキー、ローゼン。
頭文字をとって「EPR論文」と呼ばれる、量子力学史上もっとも重要な反逆の書です。
今回は第3部の開幕戦として、このEPR論文を解剖します。
ソルヴェイの敗北から5年、亡命者となってプリンストンにいたアインシュタインが放った、最後の大勝負です。