国譲りが成り、地上の受け入れ準備が整いました。
アマテラスは孫のニニギに三種の神器を授け、地上へ降します。
天孫降臨です。
ニニギは大勢の神々を従え、日向の高千穂の峰に降り立ちました。
天皇家の物語が、天から地上へ接続される場面です。
その地上で、ニニギは一人の女神に出会います。
木の花——桜と解されてきました——の咲くような美しさから名づけられた、コノハナサクヤヒメ。
ニニギはひと目で求婚し、ヒメの父である山の神オオヤマツミは大喜びで、姉のイワナガヒメまで添えて、姉妹二人を嫁がせました。
ところがニニギは、姉のイワナガヒメを送り返してしまいます。
理由は、容姿が醜かったから。
娘を返されたオオヤマツミは、恥じ、そして恐ろしいことを告げます。
二人を一緒に差し上げたのには、誓約が込められていた。
イワナガヒメを娶れば、天孫の命は岩のように永遠になる。
サクヤヒメを娶れば、木の花の咲き誇るように栄える。
イワナガヒメを返した今、あなたの子孫の命は、木の花のようにはかなく散るでしょう——。
これが、日本神話における寿命の起源です。
神の子孫であるはずの天皇に、なぜ寿命があるのか。
その答えが「岩を返して、花を選んだから」。
美しさと引き換えに、永遠を手放した。
この選択の物語は、桜をこよなく愛し、散るからこそ美しいと感じてきた日本人の美意識の、いちばん古い原型と言っていいと思います。