今回はギリシャの英雄を二人。
ただし、物語をなぞるだけではありません。
怪物退治という物語の「文法」を取り出すのが目的です。
まず素材から。
ペルセウスは、ゼウスが黄金の雨に化けて生ませた子です。
神託を恐れた祖父に、母子ともども箱に入れて海に流される。
成長した彼に課されたのが、見た者を石に変える怪物メドゥーサの首でした。
単独では絶対に勝てない相手に、神々が装備を貸し与えます。
ヘルメスからは空飛ぶサンダル、アテナからは磨かれた盾。
姿を消す兜に、首を入れる袋。
ペルセウスは盾に映った姿だけを見て首を刈り取ります。
帰り道、海の怪物の生贄にされていた王女アンドロメダを救って妻にし、故郷に帰還して、めでたく王家を継ぐ——。
ヘラクレスは、同じくゼウスの子。
女神ヘラの憎悪を一身に受けた英雄です。
ヘラの送り込んだ狂気で、あろうことか自分の妻子を手にかけてしまう。
その罪を贖うために課されたのが、有名な十二の功業です。
刃の通らないネメアの獅子を素手で絞め、首を切るたび二本生えてくる水蛇ヒュドラを火で封じ、冥界の番犬ケルベロスを連れ帰る。
十二の試練をやり遂げた彼は、死後、神々の座に迎えられました。
二人の物語を並べると、部品が驚くほど共通していることに気づきます。
チェックリストにしてみましょう。
第一に、特別な出生。
英雄は神と人間の間に生まれ、多くは生まれてすぐ捨てられるか流される。
第二に、課された試練。
自分から行くのではなく、王や神に無理難題を押しつけられる。
第三に、助力者と装備。
単独では勝てず、必ず神や賢者が知恵と道具を貸す。
第四に、怪物との知恵比べ。
正面から殴り合わず、鏡の盾、火、変装といった工夫で倒す。
第五に、生贄の乙女の救出と結婚。
そして第六に、帰還と即位、あるいは昇天。