蝋人形ではありません。
本人です。
正確に言うと、防腐処理された本物の骨格に、生前の服を着せたもの。
「オートアイコン(自己標本)」と呼ばれ、遺言による本人の指定です。
しかも大学の記念行事の際には、この姿で会議室へ運ばれ、議事録に「出席、ただし投票せず」と記されたことがある、と伝えられています。
この人物こそ、ジェレミー・ベンサム。
「最大多数の最大幸福」で知られる功利主義の創始者です。
死後まで自分を公共の役に立てようとした徹底ぶりが、いかにもこの人らしい。
今回は、道徳を「計算」に変えようとした人たちの話です。
ベンサムの出発点は、快刀乱麻でした。
善とは何か、正義とは何か。
哲学者たちが二千年こねくり回してきたこの問いに、彼は一撃で答えます。